天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

『こっちも美味しいでしょ?』
その行為に自分が照れていたようで、俺の動揺がバレなかったのが救いかもしれない。
特に返事を返さない俺を、いつものことだと思ったようで佐知はご機嫌にアイスクリームを口に運んでいた。

『佐知』
明日から行く旅行の話を先に伝えておいた方がいいと思ったが、俺のこの性格から、なんとなくストレートに言えずにいた。しかしきっと佐知は喜んでくれる気がする。

だから驚いてびっくりする佐知が見たい自分もいた。こんな自分も大概だと思いつつも、そんな俺と笑顔でいてくれる佐知が本当に愛しい。

初めて感じる感情に戸惑いつつも、楽しんでいる自分にため息が漏れる。

準備もいつも担当してくれている行商に依頼をして、必要なものはすでに車のトランクルームに乗せてあるから問題はないはずだ。そう自分に言い聞かせていると、佐知はスプーンを加えたまま
『ん?』と可愛らしく俺を見つめる。

俺は動揺を悟られないように、ピンと佐知の額をはじくと『今日は早く寝ろよ』それだけを伝え、食べ終わったアイスを持ってキッチンへと向かった。
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