なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 茉帆が熱を出した翌朝、茉帆のベッドで目覚めた。
 
 看病の為に同じベッドで眠ったのに一緒に居る事に安心して僕の方が先に眠ってしまったらしい……。

 茉帆の寝顔を見つめる。

 本当に綺麗だ。透き通るような色白の肌。
 閉じた瞼の長いまつ毛。

 額に掛かる髪を除けて……。
 思わずオデコにキスを落とす。

 今はこれで我慢しておくよ。

 唇には茉帆が起きていて、この腕の中に閉じ込めて愛してると伝えてからにしよう。

 そっと茉帆を起こさないようにベッドから抜け出す。

 ずっとここに居たいけれど……。
 そうはいかないからな。
 仕事は待ってくれないから。

 掛布団を直して……。
 やっぱり寝顔を見つめる。

 何処まで茉帆に惚れているんだろうかと苦笑する。

 茉帆も早く僕を好きになってくれと願う。

 僕以外の事は考えられないくらい好きになって欲しい。

 

 そろそろ田沢さんが来てくれる頃だ。

 心配で茉帆を一人にしておけない。

 僕が生まれる前から今枝の家に手伝いに来てくれていた信頼出来る優しい人だから、安心して茉帆を任せられる。

「いってきます」
そう囁いて茉帆の部屋から出た。


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