なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

休息の三日間

 翌朝、目が覚めたら……。
 玲於奈さんはもう居なかった。

 スマホの時計を見る。
 もう九時……。

 いる訳ないか……。

 熱は下がってるような気がする。
 念の為、計ってみる。36.7℃。
 平熱よりは少し高いけど、でも許容範囲内だ。

 起き上がって部屋を出た。

「おはようございます」
穏やかな笑顔で挨拶された。

「田沢さん。どうしたんですか?」

「昨夜、坊ちゃまから電話を頂いて、茉帆さまの事を頼まれたんですよ」

「すみません。ありがとうございます」

「とんでもない。お熱はどうですか?」

「はい。今計って、36.7℃でしたから、もう大丈夫だと思います」

「それは良かったですね。おかゆを作っておきましたけど、召し上がられますか?」

「ありがとうございます。頂きます」

「ダイニングテーブルにご用意しますね」

「はい。顔を洗って来ます」
本当はシャワーを浴びたいところだけれど、今はまだ我慢かな。
 顔を洗っただけでかなりサッパリした。


「さあ、どうぞ」

「ありがとうございます。いただきます」

「お口に合うと良いんですけど……。私が漬けた梅干しを持って来ました。良かったらどうぞ」

「ありがとうございます。家の母も梅干しを漬けるので。美味しいです。母の作る味に良く似てます」

「それは良うございました」
 田沢さんの優しい笑顔と声は落ち着く。

 実家から帰ったばかりなのに……。
もうホームシックなのかな?

 子供の頃から病気の時は、おかゆと梅干しだったなと思い出していた。

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