なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

跡継ぎ

 跡継ぎか……。

 いつまでも父親が元気で仕事をしてくれると思っていた。もちろん今は健康だし大丈夫だけれど……。

 でもこの先、医療機器の設計図を書ける人がいない現実をどうしよう。

 理工学部を卒業して入社して来た社員も居るけれど……。

 直ぐに父や専務の代わりになれる社員は極わずか……。

 このままでは和泉製作所の先が見えない。

 わがまま娘だったなぁと改めて今頃になってそんな事を考える……。

 私には出来ないだろうか?
 
 考え始めたら思考を止められなくなった。

 何処で何をどう勉強すれば父親の跡を継げる?

 調べて考えて……。

 今更、国公立大学になんて入れるとは思えない。

 私立大学か専門学校なら?

 理工学部、医用工学科で学べば設計も出来るようになれるらしい。

 でも、今更受験勉強なんて……。

 現役高校生と同じ試験なんて受かる訳もない。
 数学なんてもうキレイサッパリ忘れてる。

 それでも何処か入れる学校を探す。

 すると……。

 社会人枠で、極少人数だけれど、小論文と面接で入学出来る私立大学を見付けた。

 京都に……。

 京都に四年間、住まなければならない。

 でも他に方法がない……。

 受験しても合格出来る自信なんて全く無い。

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