なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
夢に向かって

勉強

 私の受験勉強が始まった。

 玲於奈さんが仕事の時間は小論文の書き方の参考書を読み、自分なりに文章を書く。

 原稿用紙に向かわなくてもタブレットで書いたり消したり本当に助かる。


 田沢さんは毎日来てくれて、掃除、洗濯、買い物も美味しい食事の仕度もしてくれる。
 夕食の仕度をして田沢さんは帰宅する。

 本当に私がする事は受験勉強だけ。

 こんなにして貰って落ちる訳にはいかない。

 玲於奈さんが帰宅して一緒に夕食を済ませると、食器を食洗機に入れるだけ。

 順番にシャワーを浴びたら勉強の時間。

 苦手な数学を玲於奈さんは懇切丁寧に教えてくれる。

 一日中忙しく仕事をして疲れているのに申し訳なく思う。

 だからこそ分からない所をいい加減に済まさないで、納得出来るまで教えて貰う。

 もっと高校時代に数学を真剣に勉強していればと思うけれど、今、そんな事を後悔しても始まらない。

 リビングで隣り合って座って毎晩の勉強は思っていたより疲れる。

 勉強するのにも体力が必要なんだと改めて思う。

「今夜はここ迄にするか?」

「あ、はい。ありがとうございました」

「絶対に合格すると決めて勉強するんだぞ」

 玲於奈さんの言葉を聴いていると、合格出来るような気がして来るから不思議だ。



 暑い八月も夏季休暇も、九月に入り少しだけ秋の気配を感じるようになっても、十月、十一月の紅葉を見る事もなく、ただ只管受験勉強した。


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