なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 目を覚ましたら目の前には玲於奈さんが。

「起きた? 体は大丈夫か?」
頬に触れながら優しく囁く。
こんなに甘い玲於奈さんは見た事がない。

「たぶん大丈夫だと……」
私、玲於奈さんに抱かれたんだ……。
恥ずかしくて俯くと……。

「疲れただろう? 夕食はどうする?」

「どうするって?」

「京料理の店に予約を入れてある。だけど無理ならキャンセルしてルームサービスにしようか?」

「このホテルの京料理のお店ですか? 四年前に合格祝いで両親と行ったお店ですね」

「茉帆のお気に入りだと、お母さんから聴いた」

「はい。とっても美味しくて。卒業したらまた来たいねって話していたんです」

「どうする? 行けそうか?」

「はい。もうそんなに京都にも来られなくなると思うから」

「じゃあ行くか?」

「はい。ありがとうございます」

「茉帆。その言葉使い。もう僕たちは夫婦になるんだよ」

 軽くシャワーを浴びて着替えた。


 婚姻届にサインする時、少しだけ手が震えた。
 玲於奈さんと夫婦になる。
 何だか嬉しくて少し擽ったい気分。

 京料理のお店はやっぱり美味しくて玲於奈さんも気に入ってくれたようだ。

 その夜は玲於奈さんに抱きしめられて眠った。

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