なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
名古屋へ

婚姻届とドレス

 翌朝、ホテルのキングサイズのベッドで玲於奈さんの腕に包まれて目覚めた。
 この状況に慣れなくて、嬉しくて、でも恥ずかしくて……。

 玲於奈さんが目を覚ました。寝起きの顔までキレイだなんて……。
 
「おはよう……」
唇に触れる優しいキスが、ああ、この人と結婚するんだなと改めて思う。

「おはようございます……」
私の頬はきっと紅いんだろう。

「茉帆はもう僕のものだから今朝は我慢するか……」

「はっ?」
何を?
 

 朝食を済ませてホテルをチェックアウトした。あのスイートルームのお値段は考えない様にしよう。

 二人で新幹線に乗り名古屋に帰る。
 そのまま区役所に行って婚姻届を提出した。
 玲於奈さんと私は夫婦に、私は今枝茉帆になった。


「茉帆。まだ言ってない事があるんだ」

「何ですか?」

「実は五月に名古屋のホテルで式と披露宴をする事になってる」

「は? もう決まってるんですか?」

「今枝製薬も和泉製作所も休みの日に決めたんだ」

「…………」

「怒ってる?」
心配そうな顔で私の顔を覗き込む。

「私の知らない所で何もかも決まってるんですね……」
嬉しくない訳じゃないけれど、ちょっとは相談するのが普通じゃないの?

「茉帆の荷物も僕のマンションに運んである」

「えっ?」

「きょうから一緒に住むよ」
何もかもが決定事項……。

「…………」

「その前に行く所がある」

「何処ですか?」

「茉帆のウェディングドレスを決めに……」

「それは私が決めて良いんですか?」

「勿論だよ。着るのは茉帆だからね」

「それなら許します」


 玲於奈さんが予約してくれていたドレスショップに着いてたくさんのドレスに囲まれてデザインを決める。

 デザイン画を見せて貰って素材や飾りを考える。

 やっぱり純白の花嫁に憧れる。

 五月なら肩を出しても綺麗かもと玲於奈さんに提案すると却下された。

「茉帆の肌が綺麗なのは僕だけが知っていれば良い」

 結局、胸元は開け過ぎずタフタ素材の五分袖でウエストから幾重にもシフォンのふんわり重なったドレスに決まった。

 胸元や袖にもシフォンをあしらってパールやスワロフスキーで華やかにしましょうと提案された。

 五月までに大至急でお作りしますとドレスデザイナーさんに苦笑いされた。

 玲於奈さんがここまでヤキモチ焼きなんだと初めて知った気がする。

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