なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

久しぶりの実家

 ドレスショップでの注文も決まって、やっと実家に帰れる。

「ただいま」
この言葉も久しぶりに言う気がする。

 すると待ち構えていたように両親が迎えてくれた。
「おかえり。茉帆」
と母が。

「良く戻った。さあ早く上がりなさい」
と父。

 そうか。きょうは土曜日。
 父も家に居るんだ。

「お邪魔します」
と玲於奈さん。

 四年間。いやそれ以上留守にしていた私より、数ヶ月前から毎日のように来ていた玲於奈さんの方が慣れた感じがするのは仕方がない。

 でもそれすら嬉しく感じる。
 もう家族なんだから。

「婚姻届を出して来ました」
と玲於奈さんが報告する。

「そうか。二人共おめでとう」
と父が。

「ありがとうございます。これから家族として宜しくお願いします」
玲於奈さんが挨拶した。

「こちらこそ茉帆を宜しくお願いします」

「はい。生涯大切にします」
玲於奈さんが力強く言ってくれた。

「そうだ。茉帆の白無垢と打掛け仕立てておいたわよ」

「えっ? 花嫁衣装まで縫ってくれたの?」

「勿論よ。四年間も暇だったからね。綿帽子にしたけどよかったかしらね」

「お母さん。ありがとう。綿帽子は憧れだったの」

「そうだと思ってたわよ」
母は満足そうに笑った。

「お母さんの和裁は凄いんだな。花嫁衣装まで縫えるなんて」

「うん。私の自慢の母ですからね」

「ああ。尊敬するよ」

「まあ。玲於奈さんったら」

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