なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

新しいマンション

 玲於奈さんの新しいマンションは本当に実家から車で十分で来れる。

 コンシェルジュこそ居ないけれどセキュリティは完璧。
 専用のエレベーターで十五階まで上がって行く。

「ここだよ」
玲於奈さんは笑顔で案内してくれる。
玄関ホールが無駄に広くなくて安心した。

「えっ? 凄い。素敵」
私に合わせてくれたのかアイボリーを基調にまとめられたインテリアだ。

「東京より少し狭いけど」

「ううん。充分よ」

「ベッドルームは一つで良いしな」

「えっ? うん……」

「何、照れてるんだ?」

 そりゃあ照れますよ……。
「間取りが東京のマンションに似てるのね」

「こういうのが落ち着くからかな」

「うん。あ、私の荷物は?」

「ウォークインクローゼットに置いてあるよ。こっちだ」

 東京のマンションの私の部屋の位置がクローゼットになっている。

「うん。広い。二人分置けるね」
そこには東京のマンションに置いて来たスーツやドレス、宝飾品も置いてくれていた。

 色々な事を思い出していたら玲於奈さんに背中から抱きしめられてウエストに逞しい腕が……。
「疲れただろう? もう休むか?」
耳元で玲於奈さんが甘さ全開な声で囁く。

「そうね。そうしようかな」

「一緒にシャワー浴びる?」
と玲於奈さんに聴かれたけれど今度は私が却下した。


 ベッドルームは玲於奈さんらしいモノトーンでシックな部屋かと思ったら、私に合わせてくれたんだろう。
 アイボリーホワイトと桜の淡いラベンダーピンクでまとめられた新婚さんらしい甘い装飾で、何だか恥ずかしい。

 ホテルと同じようなキングサイズのベッドが慣れなくて……。

「茉帆。おいで」
玲於奈さんの腕に包まれて眠る。



 また玲於奈さんと一緒に生活するなんて考えてもいなかった。
 四年間も放置されていったいどんなプレイよ。と考えるけれど……。

 私の四年間よりも玲於奈さんの四年間の方が、きっと辛い毎日だったのだろうと思う。

 本当に生きていてくれた事に心から感謝している。
 これから何があっても離れないで二人で幸せな家族になろうと決意していた。

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