なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 翌日は日曜日。
 初めて二人のマンションで朝を迎えた。

 先に目覚めたのは私。
 ウエストに玲於奈さんの腕の重みを感じる。それすら嬉しくて微笑んでしまう。

 静かに規則正しい呼吸を繰り返す玲於奈さん。そんな事でさえ幸せなんだと思える。

 キレイな寝顔を見つめていた……。


 卒業式を終えてホテルに帰って……。
 こんな時間が待っていたなんて考えもしなかった。

 もう玲於奈さんと夫婦なんだ……。
 幸せ過ぎて泣いてしまいそう。

 
 指先で玲於奈さんの唇をそっと撫でてみる。

 クスッと笑った玲於奈さんに、あっと言う間に組み敷かれた。

「えっ?」
下から玲於奈さんを見上げる。

「おはよう。今朝は我慢しないよ」
朝から男の色気全開な顔をして囁く……。

 濃厚なキスで唇が塞がれた。
 玲於奈さんが私の首筋に顔を埋めて舌先が肌を滑って行く……。いつの間にか開けた胸にも温かい大きな手が……。恥ずかしいところを優しく指先で触れられて……。

「ん……。あ、ん……」
意図しない声が漏れてしまうけれど止められない……。

「可愛い……。僕の奥さん……」

 玲於奈さんの唇が、指先が、全てが……。
 甘くて優しくて気持ち良くて……。

 敏感に反応する自分自身が信じられないくらい悦んでいて、どうすれば良いのか分からなくなる……。

「茉帆……。キレイだ。可愛い。愛してるよ」

「玲於奈さん……。愛してる……」
私の言葉が耳に届く前に……。

 全てが静かに消えていく……。
 二人の胸の鼓動だけが聴こえる……。

 真っ白な雲の上を漂って意識が飛んで行った……。

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