なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

最高な二人の夜

 二人で上りのエレベーターに乗る。
 玲於奈さんが押したのは四十五階。

「えっ? 最上階ですか?」

「みたいだね」
玲於奈さんも苦笑い。

 このホテルの最上階って事は当たり前だけどスイートルームという事で……。

 エレベーターを降りて廊下を進んで行くと同じ階に二部屋しかない。

 重厚な、でもとても上品なドアを開けた玲於奈さんの後から入って驚いた。

 部屋の広さや中世ヨーロッパを想わせる家具調度品の豪華さもだけれど、星が降って来そうな窓からの夜景が素晴らしい。
 
「素敵……」
思わず言葉が零れる。

「僕には茉帆の方が何倍も素敵だけどな」
優しく見つめられる。

「そんなこと……。でもこんなにして頂いて申し訳ない気持ちです」

「母さんも言ってただろう? 茉帆の四年間への気持ちだって」

「でも私は何も……」

「誰の物にもならずに僕の所に戻って来てくれた」

「そんなの……」

「京都で新しい恋人も作らずに居てくれた。茉帆は魅力的な女性だから、若い学生に好意を持たれてるかもしれないって心配もしてたんだ……」

「それは有り得ません。玲於奈さんじゃなきゃ嫌だったから……」

「だからだよ。茉帆、ありがとう」

「でも、もしも……。私が寂しくて他の人と付き合ったりしてたら?」

「それでも茉帆を取り戻すつもりでいたよ。僕にとって茉帆は生涯たった一人の愛する人だから」

「玲於奈さん……ん……」
それ以上は言葉にならなかった。
 
 玲於奈さんに唇を塞がれていたから……。
 腰と頭の後ろに回された手の熱さにドキドキする。深くなるキスに息も出来なくなる。

 どれだけそうしていただろう……。

「茉帆。愛してる」
腕の中に閉じ込められて耳元で囁かれる。

「私も玲於奈さんだけを愛してます」
スーツの背中に腕を回した。

「茉帆」
そっと触れるだけのキスをして
「さあ、シャワー浴びるか? 勿論一緒に」

「えっ?」

「今夜は拒否権はなしだ」

「あ、はい」
消え入りそうな小さな声で応えた。

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