なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

電話

 お昼になった。
 何を食べようかと冷蔵庫を覗く。

 色々入っているけれど、何故か作る気になれない。

 今朝ピザトーストを作った食パンがまだあるから、普通にトーストしてメープルシロップを付けて、今朝のコーヒーの残りで牛乳たっぷりのカフェオレにして済ませた。

 メープルシロップは最高級の美味しさだったけれど、何だか味気なく感じるのは何故だろう。

 午後からも部屋やクローゼットを使い易いように整理していたらスマホが鳴っている。

 誰だろう? 見ると玲於奈さん。

「はい」

「あぁ。僕だ」

「はい。どうかしたんですか?」

「きょうは出掛けないよな?」

「あぁ。はい。まだ部屋を片付けてますから」

「君のカードキーを渡すのを忘れたから、きょうはそこに居てくれ」

「あぁ。はい。大丈夫です。まだする事もありますから」

「そうか。あぁ。今夜、急に接待が入って遅くなる」

「はい。分かりました」

「ちゃんと食事しろよ。あるものは何でも使ってくれて良いから」

「はい」

「どうした?」

「えっ? 何が?」

「僕が遅くなるのが寂しいのか?」

「そ、そんな事ありません。一人でノビノビさせて貰いますから。ご心配なく」

「そうか。じゃあ、僕を待ってる必要ないからシャワー浴びて寝てろよ」

「分かりました」

「じゃあな」
通話は切れた。

 何だろう? 何だかモヤモヤする。
 何に対してモヤモヤしてるの?


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