なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

接待

 接待……。

 私の父親は社長だけれど、接待は好きではなかった。
 本当に良い物なら接待なんてしなくても売れる筈だといつも言っていた。


 高級料亭で食事をして高級クラブでお酒の接待……。
 そこには夜の世界の綺麗なおねえさま達も居る……。

 私の接待のイメージは、高級な食事とお酒と美しい女性……。

 大人の世界……。
 私には分からない世界……。

 
 でも嫌だ。不潔。汚らわしいと思ってしまうのは、私がまだ大人になり切れていないからなのか……。

 玲於奈さんも大人だから……。
 
 そういう接待もあるんだ……。

 
 部屋の片付けはもう終わった。


 あの夜景の見える窓から外を眺める。昨夜の景色とは全然違う。

 ここから見下ろすと何だかゴチャゴチャしていて、遠くて音は聴こえないけれど街の喧騒が見える気がする……。


 夜景だから……。

 夜の闇に包まれて隠されて綺麗に見えるだけなのかもしれない。

 汚い物も全て覆い尽くして見える真っ暗な世界なんてちっとも綺麗じゃない。

 何で、こんなにがっかりしてるんだろう?
 何で、こんなに苦しいんだろう?

 何で……。

 そのまま……。
 私は意識を失った……。

 
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