なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

病院

 重い瞼を開けると……。

 ここは何処?

 知らない天井と消毒の匂い……。
 腕には点滴が……。

「茉帆。気が付いたか?」

「えっ? 玲於奈さん?」

「良かった。苦しくないか? どこか痛い所はないか?」

 そう言ってる玲於奈さんの方が、たぶん顔色が悪いと思う。

「私……」

「窓の前で倒れてて、救急車を呼んだ」

「あぁ。そうか……」
あのまま倒れたんだ……。

「今、先生を呼ぶから」
ナースコールを押して、直ぐに医師と看護師が来てくれた。

「和泉さん。気分はどうですか?」

「あぁ。はい。大丈夫だと思います」

「苦しいとか痛い所はありませんか?」

「はい。ありません」

「今までに、気を失う事はありましたか?」

「いいえ。ありません」

「心臓の薬を飲んでいますか?」

「はい」

「いつからですか?」

「一年前からです」

「胸が苦しいとか発作がありましたか?」

「時々ありましたけど、最近は半年くらいはありませんでした」

「すみません。診察をしますので……」

「あぁ。はい。分かりました」
玲於奈さんは病室から出て行った。

聴診器を当てて心臓の音を聴いているみたい。

「微かに雑音がありますね。そう言われた事はありますか?」

「はい。聴診器でも雑音が聴こえると前にも言われました」

「明日、検査をしますから」

「あぁ、はい」

「苦しいとか痛みがあったら、直ぐナースコールを押してくださいね。今夜はゆっくり休んでいてください」

「はい。分かりました。ありがとうございました」


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