なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

重役会議

 午後になって専務は坂元秘書と重役会議に出て行った。

「さあ。勉強の続き」

 重役会議はその日の議題にも依るけれど結構長引くと坂元秘書が言っていた。

「もう四時か。喉が渇いたな。飲み物を買って来よう」

 なるべくだからね。喉が渇いたなら行きますよ。

 誰も居ない。自販機でアイスティーを買って専務室に戻る。

「うーん。美味しい。喉が潤った」
さてと、勉強の続き。

 まだ重役会議は終わらないのかな?
 もうすぐ六時だよ。

 そんなに大変な議題なのかな?
 私には分からないけど……。

 薬を扱っているんだから大変なんだよね。
 人の命を預かっているんだから。

 結局、専務と坂元秘書が専務室に戻って来たのは七時を過ぎていた。

「お疲れさまでした」

「今まで勉強してたのか?」

「はい。他にする事もないので」

「お疲れさん。さぁ、帰るか?」

「はい」

「遅くなったから食事して帰ろうか?」

「そうですね」

「伊織も一緒に行かないか? 三人だけの茉帆の歓迎会にするか?」

「そうですね。お邪魔じゃなければ……」

「邪魔だなんて、そんな事ありませんから」

「じゃあ、そうしますか」

「茉帆は何が好きなんだ? 和食? 中華? イタリアンか?」

「私は何でも好きですから、お任せします」

「茉帆の歓迎会なんだから」

「じゃあ和食で」

「分かった。伊織どこが良いかな?」

「そうですね。割烹飛鳥なんてどうでしょう?」

「そうだな。悪いが電話を入れて聴いてみてくれるか?」

「分かりました」
伊織さんが携帯で確認を取る。
「はい。三人で和室で今からお願い出来ますか? はい。では伺います。宜しくお願いします。取れました」

「じゃあ行くか?」


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