なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
謎の男
 月に一回ある連休の初日に病院に行って薬を貰って、玄関を出た所で声を掛けられた。

「君、秋川と付き合ってるの?」

 あの時、秋川さんと一緒に居た人……。

「付き合ってはいません」

「あんな奴、止めとけ」

「はぁ?」

「あいつがどんな奴か教えてやるよ」

「どうしてそんなこと……」

「狼の餌食になりそうな赤ずきんちゃんを助けるためかな?」

「随分と物好きなんですね……」

「とにかく、明日、この店予約しておくから」
イタリアンのお店の名刺を差し出す。

「このお店なら分かりますけど……」

「八時位には行けるから、その前には行って待ってて。えっと名前は?」

「和泉茉帆です」

「名前を言えば席に案内して貰えるから。必ず来いよ。じゃあな」

「まったく何なのよ」
 
 秋川さんとは何も無いし、付き合うつもりも全く無い。
 
 だから全然関係ないんだけど……。

 あの人を信用した訳ではない。でも気になったから……。
 
< 8 / 188 >

この作品をシェア

pagetop