なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
 翌日、指定されたイタリアンのお店に七時には着いてバジルのパスタを食べて、アイスアップルティーを注文する。

 すると声が聴こえた。秋川さんとあの人、名前も聴いてなかったなとボンヤリ考える。

 この店は椅子の背凭れが高くて真後ろに居る私は見えない。

 注文する声が聴こえた。
 
「秋川、この前、病院で会った子と付き合ってるのか?」

「微妙ですね」

「微妙とは?」

「彼女、和泉茉帆って言うんですけど。合コンで知り合って」

「へぇ。合コン行くような軽い感じには見えなかったけど」

「ガードが堅くて、全然堕ちないんですよ」

「お前なら、女の子に不自由はしてないだろ?」

「まぁ、そうですけどね。この前、看護師のミナちゃんとホテル行ったんですけどね」

「そのミナちゃんと楽しんだんだろ?」

「凄く積極的でかなり良い思いさせて貰いましたよ」

「なのになぜ彼女にこだわるんだ?」

「茉帆ちゃん、スタイル良いし美人で可愛いし、めちゃタイプなんですよ」

「でも相手にして貰えない? どうして彼女なんだ?」

「ファッション誌にも載るような有名美容室の美容師だし腕が上がれば収入も上がる。土日は仕事だし、その間俺は遊び放題。平日の夜と彼女の休みは彼女と過ごす。最高じゃないですか?」

「彼女の事はどう思ってる?」

「まぁ、ステイタスかな? 男なら最高に良い女と結婚したいじゃないですか?」

「そこに気持ちはないのか?」

「いや。ありますよ。好きですよ。もちろん」

「お前の場合、好きが軽いんだよ。ミナちゃんにも好きだって言ったんだろ?」

「そりゃあ、ホテルに誘う為なら、好きだくらいは言いますよ」

「いろんな病院の看護師や薬剤師に声掛けて口説いてるんだろ」

「もう可愛い子や綺麗な子がたくさん居て。この会社に入って良かったですよ」

「仕事じゃなくて、そこか?」

「まあ、男なら良い女と付き合いたいですからね。夢はハーレムかな?」


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