仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
虚勢を張っているように見えてクッとつい笑いを零していると、その女性がこちらを向いた。
その顔には大きな揚羽蝶のような仮面が被せられている
『この仮面舞踏会で、お前は、最愛の人を見つけるはずだ』
なぜか急に皇帝の言葉が浮かんでドキンと胸が高鳴った。
黒髪のあの女性は彼女じゃない、なのに気になってユーリスは動揺する。
その間に男性が彼女に近づき楽しそうに会話してるのを見て今彼女を誘わないと後悔する気がして焦燥感に駆られた。
今さっき誰かもわからないのによく誘えると冷笑していたのに、頭とは正反対に心は逸る気持ちが加速する。
落ち着かせるように胸を抑え意を決したようにふたりに向かって歩き出した。
ちょうど男性がほかの女性に話しかけられよそ見をした。
その間にユーリスは女性に近づき彼女の手を取った。
「ご令嬢、私と踊っていただけますか?」
「え?あの」
返事を聞く前に攫うように彼女をダンスの繰り広げられるホール中央に誘った。
こんなことをしたのは初めてだが後ろからおい!と男性の呼び止める声が聞こえても構うことはなく、流れるように彼女を連れていき腰を抱き寄せると曲の途中からダンスを始めた。
戸惑っていた彼女も必死でついていこうとステップを踏む。
この感覚、どこかで覚えがあるような……。
頭の片隅でふと思ったことも今は深く考える余裕がないくらいユーリスは蝶の仮面の彼女に釘付けだった。
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