仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「悪かったなユーリス。私たちは見とどけ人だ。大人しくしているから構うことなく始めてくれ」
それにはひくりと口が引きつったユーリスだったが、意を決したように不安そうに両手を握るフローラに向き直った。
「フローラ嬢、君にひどい言葉を吐き傷つけたこと深く後悔し反省しています。申し訳ありませんでした」
ユーリスが頭を下げるとフローラは慌てて同じように頭を下げる。
「い、いえっ!私の方こそお部屋に勝手に入るなど無礼を働いたことをお詫びします」
「君は何も悪くない。無礼なのは私の方だ。その上屋敷を追い出してしまったこと重ね重ね申し訳なかった」
「いえ、不快な思いをしたのですから当然のことです」
「私は君の話を冷静に聞けなかった。すべては私の責任だ」
「そんなことはありません、そもそも私が軽率だったから……」
「はいストーップ!」
ふたりで言い合っていると大人しくしていると言ったはずの皇帝が割って入ってきた。
「このままではふたりとも謝るばかりで堂々巡りだ」
唖然とするユーリスとフローラを交互に見て皇帝はユーリスに問いかける。
「ユーリス、フローラを傷つけたこと反省しているのだな」
「はい」
「ではもう二度と同じ過ちはしないな?」
「もちろんです」
皇帝は力強く頷くユーリスを見て、今度はフローラに問いかける。
「フローラ、ユーリスのしでかしたこと許せるか?」
「も、もちろん!ユーリスさまはなにも悪くありません」
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