仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
そこへベリル執事が朝食の用意ができたと呼びに来た。
「昨夜は眠れましたかな、フローラさま」
「ええ、我が家のベッドよりふかふかでとっても寝心地がよかったです。おかげで朝は爽やかに起きられました」
「それはようございました」
元気に答えるフローラをベリルは眩しそうに目を細め見つめた。
「あの、ユーリスさまは?」
「それが、昨夜は宮殿に泊まられたようでお帰りになられていないのです」
「そうですか」
申し訳なさそうに答えるベリルにフローラはしゅんと肩を落とす。
やはりユーリスはこの婚約に乗り気じゃないのでは、と頭を掠める。
「旦那さまは今外交に力を入れている皇帝に付いてお忙しいのです。フローラさまにはくれぐれもよろしくと昨日おっしゃっておりました。きっと今日は帰ってくると思いますので」
「ええ、そうね。皇帝陛下の信頼も厚い優秀な宰相補佐官さまですものね。お忙しいのもわかります」
「そのかわり旦那さまに代わって私どもが精いっぱいおもてなしさせていただきます」
「ふふっ、ありがとう。そうだわ、ユーリス様のことをもっと教えてくれるかしら?彼のことをもっと知りたいわ」
「もちろんでございます」
気を取り直し笑顔になったフローラにベリルは目を細めた。

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