仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
ふわふわと和む空気に浸っているとユーリスがかしこまったように顔を引き締める。
「フローラ」
「はい」
フローラの両手を取り真剣な面持ちのユーリスにフローラも居住まいをただした。
「私のすべてを受け入れてくれたことに感謝している。やっと私が私でいられる居場所を見つけられた気がするよ。君に出会えたことは私にとって最良の幸運だった」
「私の方こそユーリスさまのような素敵な方に出会えて幸せです」
「こんな愛しい気持ちを持ったのは初めてなんだ。愛しているフローラ、君は私の光だ」
「愛していますユーリスさま。私もこんなに愛しい思いは初めてできっとこれが私の初恋なんです」
かわいらしく恥じらうように言われユーリスは無上の喜びを感じこれから彼女を大切に愛していきたいと心の中で誓う。
ところがフローラはぱっと顔を上げお説教を始めた。
「でも、私だけでなくあなたには愛してくれる人たちがたくさんいることを忘れないでくださいね? 愛の形は違っても、皇帝陛下も、スペンサー侯爵も、ベリルさんやマリアやセドリックや、みんながユーリスさまを慕い愛してくれているのですよ?」
切々と訴えるフローラにユーリスはたじたじになる。
「っ……、そうだね。私はたくさんの者に愛されて幸せ者だよ」
「そうです。だから遠慮せず、ユーリスさまもみんなを愛してください。あ、もちろん一番は私でないとだめですよ?ほかの女性にまで愛情を注いでしまったら私拗ねますよ?」
自分で言っておいて勝手にヤキモチを焼くフローラにふっと笑ったユーリスは彼女の頬に手を添えて上を向かせると見つめ合う。
「もちろん、女性で愛しているのはフローラだけだ。この先もずっと君だけを愛すると誓うよ」
そっと重なる唇。
こんこんと湧き出る泉のように愛情というものが自分の中から溢れているのをふたりは感じた。
温かく甘いキスを重ねては微笑み合い仲睦ましく寄り添って幸せを分かち合った。

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