仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「ああ、領地管理の専門書」
フローラは分厚い本を取り出し開いてみる。
「領地管理に興味があるのか?」
フローラはひとり娘だしアーゲイド男爵の手伝いでもしてるのかとユーリスは聞いてみたのだが、フローラは首を横に振り本を戻した。
「お父さまの手伝いになればと勉強してみたんですけど、私には難解過ぎて全然頭に入りませんでした」
肩を竦めたフローラをユーリスは意外そうに見つめる。
本の背を見ながら歩くフローラはぽつりぽつりと話した。
「私お勉強はあまり得意ではなくて、じっとしているより体を動かしている方が性に合っているみたいです」
「鶏を捕まえてみたり?」
「うっ……」
思わずユーリスがからかってみるとフローラは言葉に詰まり顔が赤く染まる。
「あれは、その、はあ〜、取り繕ってもすぐバレますよね」
言い訳は通用しないだろうと観念したフローラは大きなため息をつく。
「そうです。お勉強ができない分少しでもお父さまの役に立てればとなんでもしました。使用人の手伝いや家畜の世話、孤児院で子どもたちと一緒に農作業だってします」
< 46 / 202 >

この作品をシェア

pagetop