地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
とりあえず、教科書とかにイタズラされないために机の中のものは全部持ってきたけど……。
あと考えられるのはシューズロッカーかな?
この学校は人数が多いから、普通の下駄箱だと場所間違いが多くなるんだとか。
だからみんな鍵付きのシューズロッカーになっている。
「鍵かけておけば靴を隠されたりとかはされないだろうけど……」
でも、その鍵穴を壊されたら困るし……。
仕方ない、靴も持ち歩くようにした方がいいか。
寮と学校までの距離があまりないのがせめてもの救いだ。
「あ、そうだ。奏に先帰ってるってメールしとかなきゃ」
そう思ってスマホを取り出してメッセージを打ち込んでいると、丁度奏から電話がかかってきた。
あたしは通話に切り替えてスマホを耳に当てながら生徒玄関を出る。
「あ、奏? ごめんね、先帰ってるから」
『いいけど、何かあったのか?』
「あたしはまだ何もないよ。ただちょっとしのぶがね……」
『しのぶが? どうしたんだ?』
一気に心配そうな声音になった奏に、午後の様子を一通り話した。
『そっか、分かった。俺も後でちょっと様子伺ってみるよ』
「うん、そうして」
あたしはしばらくしのぶには近付かないって決めたけど、奏には近くで寄り添っていてほしいって思うから。
「……ねえ、奏。奏が秘密にしたいのって、容姿関連だけ?」
一つ、確認したいことがあってそう聞いてみる。
『ん? まあ、大体そうだな』
「じゃあ他は何してもいいよね?」
その言葉で、あたしの意図は察したらしい。
フッと笑うような音が聞こえて、言葉が返ってきた。
『ああ。いじめなんてするような奴らは、まとめてぶっ潰してやれ!』
その返事にあたしは笑って空を見上げる。
「了解」
残暑の空は、晴れ渡っていた。