地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 あたしはしのぶの質問には答えず、「ねえしのぶ」と呼びかける。

「しばらくさ、あたしと一緒に行動しない方が良いと思うんだ」

「え?」

「多分、明日もお昼は二階席で食べることになるだろうし……これから色々大変なことになりそうだから」


 大変なことに関しては具体的には言わない。

 言わなくても察するだろうし、言ってしまうとしのぶはさらに拒否しそうだと思ったから。


 案の定、しのぶは顔色を変えた。

「大変なことになるんだったら、尚更一緒にいて助けたいよ」

「しのぶは優しいね。でもだから一緒にいてほしくないんだ。……分かってよ」

「美来……」


 ズルい言い方をしてるのは分かってる。

 しのぶがあたしを守るために一緒にいたいっていうのに対し、あたしはだからこそ守ってほしくないって言ってる。
 そして、そのあたしの気持ちを尊重してって。


「心配しなくても、落ち着いたらまた一緒にご飯食べたりカラオケ行ったりしよ?」

 そう言って笑うあたしに、しのぶは辛そうな顔をする。

 顔をうつ向かせて、何とか声を絞り出した。


「……少しの間だけだからね」

「うん」

「どうしても美来が辛くなったら、ちゃんと助け求めてね」

「……うん」

「……今の間は何? ちゃんと教えてよ!?」


 あたしが躊躇ったのを的確に察してしまったしのぶは顔を上げて詰め寄った。

「う、分かった! ちゃんと言うから!」

「それでよし!」

 腕を組んで満足そうにしたしのぶ。

 どちらともなく笑いが上がって、場の雰囲気が少し明るくなった。


「じゃああたし行くね、色々対策練らなくっちゃ!」

 明るく言ったあたしに、しのぶも明るく送り出してくれる。

「うん、頑張り過ぎない程度に頑張ってね!」


 そうしてあたしは保健室を後にした。
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