地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 まるで月の精霊とでも言えそうなその姿に、あの場にいたすべての人間が見惚れた。

 のちにかぐや姫みたいだったね、と言った千隼の言葉がすんなり入って来るほど、彼女の見た目は月の姫そのもので……。


 そのあと少し会話をして人間だと分かっても、その神秘性は崩れることはなかった。


 手に入れたいと思う俺達から逃げおおせた彼女。

 名前も知らず、手掛かりはその容姿以外にはない。


 それでも諦めることは出来ない。

 諦められないほどに、彼女の存在は心に(くい)のように刺さったままなのだから。


 あの場にいた連中は皆彼女に見惚れた。

 手に入れたいとまでは思わなくても、せめてまた会いたいと願う者ばかり。


 そのおかげで、《月帝》も《星劉》も関係なく《かぐや姫》を見つけることがそれからの共通の目標になった。


 あのときいたやつらはそれでいいが、二年経って《かぐや姫》を知らないやつの方が多くなってきた。

 共通の目標が、共通ではなくなってきたんだ。


 それゆえに下っ端の連中は《かぐや姫》のことに関しては気乗りしない。

 言うことも聞かない。


 その辺りの齟齬(そご)があるせいで、まとまりが悪い。
< 227 / 878 >

この作品をシェア

pagetop