地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

閑話 西木戸 連

「はぁー疲れた。流石に朝の仕込みも手間のかかる料理は大変だな」

 俺は肩を回しながら(ひと)()ちた。

 数人ならともかくこの家に住む全員の分を用意するのは骨が折れる。


 元々は当番制だった食事の調理。

 だけど大雑把なここの連中は、味付けはもちろん野菜が生煮えだったり肉が焦げてたりととにかくメチャクチャだった……。

 ここに世話になるようになって早々に我慢出来なくなった俺は、小学生のうちからここのキッチンに入っていたな。

 そのうち調理は基本俺がやって、他の連中は俺の手伝いって感じになっていたんだ。


 料理自体は結構楽しかったから良いんだが、ここの連中は食う方もメチャクチャで……。

 いや、食事作法は親父さんや姐さんが厳しいからちゃんとしてるけど、味とかどうでも良くて腹に入ればいい、みたいな……。

 料理人泣かせなやつらなんだ……。


 だから俺も気が向いたときにしかしっかり料理しなくなってたんだよなぁ。

 今回は美来ちゃんが来るって言うから頑張ってみただけで。


「……美来ちゃん、もっと俺の料理食ってくれねぇかなぁ……」

 無理なのは分かっているけど、ここに住んで毎日俺の料理食ってあの笑顔を見せてくれるといい。

 そう思わずにはいられない。

 それくらい嬉しかったんだ。
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