望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~

「え?」
つい漏れたその言葉に、私は自分の声ではない気がした。何が起きたというのだろうか。
キスされる! そう思うも間近でフッとからかうように笑ったのがわかる。

「どういうつもり?」
医者と看護師という関係など忘れ、イラっとして強く言った私に、いつもとは違う妖艶な笑みを浮かべた望月先生の視線とぶつかる。

「柚葉さん、ドキドキした?」
どういうつもりかわからないが、今までの敬語はなく挑むような視線を向けら内心ドキマギしてしまう。
そしてすこしふざけたような言い方に、私はそれを隠すように語気を荒く背を向けた。

「だからなによ?」
「キスしてほしかった?」
フッとあまりにも綺麗な表情を浮かべて、私をジッと見つめる。

「そんなわけないでしょ!」
それを悟ったのか、トンと肩を押され私は今度こそ仰向けに縫い留められるよな体勢になる。
これでは押し倒されているのと変わらない。ドキドキと心臓の音が煩い。
どうしてこんなにも動けないのか自分でもわからない。
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