望月先生は甘くない ~年下ドクターの策略~

「まあ、関係ないですよね」
サラリと口にすると、彼はフッと笑った。

「望月先生って……」

「春樹です」

「え?」
言われている意味が解らなくて、問いかければ綺麗なアーモンド色の瞳が私を捕らえる。

「今はプライベートなので先生はやめてもらえますか?」
呼び名の事だとわかり、確かに外で先生と呼ばれることを嫌う人もいることを思い出す。
好きな人もいるが……。
小さくため息を付くと、私は舐められないようにと彼を見据える。

「じゃあ、望月君」
あえて君と呼んだのを故意だともちろん気づいたのだろう。しかし彼は表情を変えることなくさらに言葉を重ねた。

「春樹です。いいましたよね?」
「どうしてそんな呼び方しなくちゃいけないのよ。調子に乗らないで」
名前で呼ぶことが恥ずかしいなど到底言える訳もないし、悟られたくなくて私が怒ったように言えば、彼は「ふーん」とだけ言って息をついた。
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