きみと真夜中をぬけて







「ひので あや……」

「うん。俺の名前」


日之出 綺(ひので あや)。そう名乗った男はしゃがみ込むと、雨で濡れた地面に木の枝でそう書いた。



漢字見たら美しすぎて目玉出るといっていたけれど、確かに美しい。残念ながら目玉は飛び出なかったけれど。

「綺」という字でアヤと読むところも、現代っぽい珍しさがある。




日之出 綺。ひので あや。ヒノデ アヤ。


たとえ記憶力が良くなかったとしても忘れないだろうなと思った。



「つーか夜ってこんなに静かなんだ?俺、今日が初犯だからあんま感覚わかんなくて」

「初犯って……深夜に外に出るのは犯罪じゃないでしょ」

「未成年の深夜徘徊は補導対象よ?」




悪いことしてるのに変わりはねえだろ、

そういって綺が笑う。笑顔があどけなくて、雰囲気が少しだけ柔らかくなったように感じた。


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