きみと真夜中をぬけて






「蘭。雨降ってるから。気を付けて」

「うんー」



今日もまた、夜が来る。

6月の後半といえばまだ梅雨は明けきっていないわけで、ぱらぱらと雨が降る夜が続いていた。


履きなれたスニーカーに足を通し、黒のキャップをかぶる。傘は邪魔だし、差した時に自分の周りに空気が籠るのも嫌いだから、極力傘はもたないようにしている。キャップをかぶるだけで、視界は途端に良好だ。

まあ、雨だから空気自体はよどんでいて気分も下がりがちではあるけれど。



「じゃあ、いってきまーす」



帰りがてらアイスが食べたくなった時のための予備の500円と、濡れたベンチを拭くためのティッシュが入ったサコッシュをぶら下げ、ポケットにスマホを忍ばせる。ワイヤレスのイヤフォンは首にかけていつでも聴けるように。

今日も今日とて、たのしい夜を越える準備は万端だ。

< 40 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop