きみと真夜中をぬけて



「ひとりで抱えきれなくなったら俺にぶつけてもいいぜ、菩薩の心で聞くし。何も知らないからこそ話せることもあんだろ。知らんけど」

「知らんのか」

「知らんわ。ところで蘭って何歳?」

「急に?」

「今気になったから」

「17、高3」



「まじかおれも高3。明日誕生日、18の」

「なにそれ祝ってほしいってアピール?明日は来るのやめよ」

「おっっっまえ…」



「あ、もう日付越えてるから今日じゃん。そろそろ帰ろっかな」

「おいせめておめでとうくらい言ってくれ18歳最初に話してる貴重な人間だぞ蘭」

「じゃあね綺」

「おまえ……」





私たちは、お互いのことをまだ何も、よく知らない。

知っているのは名前と趣味、最近は待っていること、苦手なこと、好きなこと。それから、






「また今夜。誕生日プレゼントもってくるよ」




───きみの、誕生日。

今夜またこの場所に、きみが欲しがる言葉を伝えに来るよ。


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