スプラッシュ
序章

巻田組

「また髪色変えたのかよ、おまえら」

狩野は目の前に二つ並んだ頭を見て、呆れた顔で言った。

その目の前にいる男二人、拓と陸はまったく同じ顔、表情で、狩野の声に振り向いた。

「遅いっすよ、狩野さん」「俺ら30分以上待ってるんすけど」

二人は真っ青に染められた髪の毛をなびかせ、狩野の方へ駆け寄った。

狩野は心底面倒そうに答える。

「お前らが勝手に待ってたんだろうが。一緒に登校て、ガキじゃねえんだから」

「んなこと言って、バイクはどうしたんすか?狩野さん」
「俺らと歩いて登校する気満々じゃないっすか、狩野さん」

二人は人懐っこさを感じさせる細い目をさらに細めて笑った。

狩野はそんな二人を無視し、学校へと歩き始めた。二人は慌てて狩野の後を追う。

「ちょっと待ってくださいよ!」
「んな照れないでくださいっす!」

なんでこの双子はこんな朝っぱらから騒がしいんだ、と狩野は辟易する。

「つーかどうっすか?この髪色!」
「青にしてみたんすよ!」

「見りゃ分かるよ」

「なかなか似合ってますっしょ?」
「パクるのはなしっすよ?」

「パクらねえって」

狩野は苦笑いで言う。

「狩野さんはずっと金パっすよね~」
「なんか金パってひと昔前のヤンキーって感じっすよ」
「飽きないんすか?」
「まあ、似合ってますけど」
「てか、今更変えられてもなんかキモイよね」
「ね~」

自分のことはお構いなしに話を続ける双子に、狩野は呆れを通り越し可笑しくなってくる。

この双子とはもう長い付き合いだ。
このやかましさにも大分慣れてきた。

慣れれば愉快なもんだな、と狩野は二人に悟られぬよう表情を緩めた。
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