誘惑の延長線上、君を囲う。
要らないものはドサドサッと大きなゴミ箱に入れて、今までに使用していた不必要になった紙の資料をシュレッダーにかける。

仕事用のバックに手荷物を入れ、仕上げに最後の一枚をシュレッダーにかけて、
「終わりに部長に花向けの言葉があります。某資産家のMさんのお子さんが三世帯住宅をお願いしたいと言っていたのですが、私にしか頼みたくないと言っていたので大変残念ではありますが、他営業所の方にお願いするように言いますね。では、ごきけんよう。有給消化の件や退職手続きは自分で総務課に行きますのでお構いなく!」
と言って職場を去った。

その後すぐに本社の総務課に連絡し、退職手続きを取った。諸々な手続きの資料は自宅に送付されるそうだ。某資産家のMさんのお子さんにも退職してしまった事を告げ、他営業所で親切にして頂いた営業マンを紹介した。Mさんのお子さんは私の紹介なら安心出来ると言ってくれた。

入社する際には履歴書や職業経歴書を送付してからの面談などがあり諸々、色々と工程があり時間を要する物だが、退職する時には意図も簡単。躊躇も未練もなければ、『辞める』と言うだけで事が進んで行くんだもんな。

私は晴れ晴れとしている街中を颯爽と歩く。唯一の営業部の女子社員だったせいか、あの部長にはすれ違い様にお尻を触られたり、ぶつかったりする度に胸を触られたりしていた。ぶつかっただけで毎度毎度、胸に手の平が触れる訳がなかろうが!

営業成績も伸び悩んでいて、ストレスも溜まりまくな上にパワハラ、セクハラは日常的だった。去り際はやり過ぎた感もあると思うが、そんな会社は辞めて正解だ。

もっともっと私自身を必要としてくれて輝ける職場を探したい。
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