誘惑の延長線上、君を囲う。
大学卒業後に冷凍食品メーカーの営業として入社したが、数年後に異物混入事件が発生する。異物混入事件はアルバイトに来ていた若者が逮捕されると言う結末を迎えて収束した。その後の業績悪化により自己破産手続きを取り、会社自体がなくなる。元々大きな会社ではなく給料体制もそこそこだったが社長や奥さん、手伝いをしていた息子さん夫婦や近所のおじさん社員など働いている方々の人柄が良くて大好きだった。

おじさん社員に連れられてお得意先を回ったり、新規開拓を狙い自分のヒールが擦り切れる程歩いて、時には筋肉痛にもなる。楽な事ばかりではなかったが毎日が充実していた。

大学在住中に大手企業の面接も何度か受けて二社から採用を言い渡されたが、冷凍食品メーカーの社長達の人柄に惚れ込んでしまい、そちらに乗り換えた。

誰もが知っている大手企業からの採用を断ったと知った周囲からは『馬鹿じゃないの!』と非難されたが、大手企業に就職するだけが人生の幸せではないので、私は全く気にしなかった。

そもそも冷凍食品メーカーに就職したのは自分の大好きなカニクリームコロッケを作っていたのがきっかけ。初めの内に受けた就職試験は手応えを感じず、煮詰まり始めていた。ネットからも募集案件を探し当て、自分の大好きな子供の頃から馴染みのあるカニクリームコロッケを作っている会社だと知り、採用試験を受けた。

勤めていた冷凍食品メーカーがなくなり、就職先を探していた私は投げやりになって、常に募集をかけていた有名な住宅メーカーに入社する。住宅メーカーは主に男性が活躍していて、自分は何故営業で入社してしまったのか悔いていた。

───そんなこんなで、住宅メーカーは向いていなかったので辞めて正解。
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