誘惑の延長線上、君を囲う。
「前までは、それでもオッケーだったから来てから話せば良いと思ってたし……。まぁ、断れた理由も分かるけど……。彼女、いつ出来たの?一緒に住んでるの?」

陽翔君が日下部君に向かって問いただす。日下部君は冷静な態度で「うん、一緒に住んでる」とだけ、伝えた。それを聞いた陽翔君は急に悲しそうな顔をして、「分かった」と呟いた後に、背負ってきたリュックの中をガサガサと弄りチャックを閉めた。

「じゃあ、帰るわ」

「家に帰るのか?」

「んー、友達に泊まって良いか聞いてみる。ダメなら、また考えるわ……」

日下部君との会話の後に陽翔君はリュックを背負って部屋を出ていこうとしたので、私は咄嗟に止めた。

「陽翔君が良ければ、泊まっていって。私は私の部屋があるし、寝る場所ならちゃんとあるから。ご飯もね、陽翔君の分も作ってるし、心配しないで大丈夫だから!」

私の言葉に立ち止まり、何も言わずに日下部君の顔をじっと見ている陽翔君。私も自然と目線を日下部君の方へ向ける。日下部君が良いと言わなければ、陽翔君はどうすることも出来ないよね。私達の眼差しに耐えられなくなった日下部君は、「仕方ない。今日だけだぞ」と呆れ顔で言った。
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