誘惑の延長線上、君を囲う。
歩道の信号待ちの時、今日の空は雲一つない綺麗な青空だと気付く。こんなに晴れ晴れとして気持ちの良い日は、せっかくだからテラス席で程良く吹いている春風に当たりながらゆっくりとランチでも取る事に決定した。

啖呵をきって午前中の内に仕事を辞めてしまったので、おひとり様の私は急に時間が出来てしまった。そんな私は、お気に入りのカフェでゆったりと紅茶を飲み、ネットサーフィン中。

「あっ!」

就活サイトを眺めていると輸入雑貨を扱うお店がエリアマネージャーを募集しているとあった。私は興味が湧いたのでつい、声をあげてしまっていた。周囲からは驚きの視線を感じる。募集要項には学歴、経験、年齢は問わずと記載されている。

”Иatural+”(ナチュラルプラス)輸入雑貨販売。大元の会社は彩羽コーポレーション。彩羽コーポレーションと言えば、他にも雑貨店やカフェを経営している。私もここの雑貨やカフェは好きで、お世話になっている。天職になったら良いな、と思った日が吉日、カフェを出てから問い合わせをしてみた。

早速、履歴書と職務経歴書をメールに添付する事になり、自宅に帰宅するとすぐに取りかかり翌日の朝には送信した。

面接の日はいつだろう?連絡を待っている間、冷凍食品メーカーに就職する時みたいにワクワクしている。

夕方、見慣れない番号から連絡が来たので出ると彩羽コーポレーションの人事担当者からだった。面接の日程が決まり、事前に彩羽コーポレーションについて下調べをしている時に見知らぬ電話番号からスマホに電話が来た。

誰だろう……?以前、知らない番号からかかって来た時に咄嗟に出てしまったら何かの勧誘だったり、オレオレ詐欺だったので対応するのが面倒だったから、なるべくなら知らない番号には出たくないんだよね。

「……もしもし?」

放置しておくつもりだったのだが、随分と長めのコール音が響いていたので、諦めて恐る恐る電話口に出る。

「委員長?俺、だけど……」

勧誘よりも、オレオレ詐欺よりも、対処するのが難しい人物から電話が来たのだった……。私、電話番号は教えてなかったはずなのに。
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