誘惑の延長線上、君を囲う。
「今更隠す事でもないじゃん!日下部はいつも佐藤を目で追ってたし、佐藤も同じだった。気付いてないのは本人達だけだったんだよ!それなのに……お互いに素直じゃないから、そのまま何も無く卒業しちゃったくせに……今頃、結婚かよー!遅いんだよ!俺だって、佐藤狙ってたのによー。お前に遠慮してたんだぞー!」

同級生も酔いだして、日下部君と私に絡み出す。けれども争いになる訳ではなくて、皆が笑っていた。

「とにかくおめでとう!」
「琴葉、日下部君、おめでとう!結婚式、絶対に呼んでね!」

沢山の祝福を受け、同窓会は終了した。仲人は担任の先生になり、結婚式の段取りまで決めていた同級生もいた。

私達は二次会には参加せずに自宅まで帰る。冷え込んで寒い夜空の中、手を繋いで帰路を歩く。

「日下部君が高校時代、私の事を好きだった……って本当?」

酔った勢いで聞いてみる。

「んー?琴葉こそ、本当?」

「あー、ずるい!はぐらかした!」

私はずっとずっと好きだったよ。

「確かに好きだった。でも、あの頃に付き合ってたら……結婚してたかなぁ?素直になれないままで、喧嘩別れしてたかもしれないな。だから、遠回りしたけど……今の方が幸せになれるよな」

「そう、かもしれないね」

高校時代、私達は子供だった分、上手くいかなかったかもしれない。再会したきっかけは何にせよ、私達は一生を共にすると決めたのだから、どんな困難があろうとも幸せになるんだ、絶対に。

「っわ、何、いきなり、どうしたの?」

4階建て位のブラウン系の建物の前で、ヒョイッと持ち上げられ抱き上げられる。

「帰るのめんどくさい。ここに泊まろう」

ビジネスホテルかな?入口がガラス張りでオシャレなイメージ。外からエントランスが見える限り、照明も暗めでシックな感じがする。入口付近には休憩、とか宿泊とか書いてある!
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