誘惑の延長線上、君を囲う。
洋服を着る前に脱衣場の鏡に自分自身の身体を映し、赤い蕾の痕をなぞる。好きでもないくせに、何故あんなに丁寧に抱いて、こんなにも沢山の印をつけたのだろう?これじゃ、愛されていると勘違いしてしまう。

ガチャッ。

「俺もシャワー浴びる……」

「な、何で入って来るの?」

私は慌てて、バスタオルで身体を覆った。

「隠さなくたっていいのに?……もう佐藤の全てを知ってるんだから」

日下部君は後ろから抱きしめてきて、首筋にキスを落とす。首筋はくすぐったいような感覚があり、ゾクッと身震いした。

「佐藤は首筋弱いんだ?」

「止めて……!」

私の反応を楽しむかのように、もう一度、首筋にキスを落とされて、甘やかな声が漏れてしまう。

「……ココにも跡をつけようか?」

「ば、馬鹿っ!そんな事したら、誰かに見られる」

「見られたら苦しむ?」

「困るに決まってるでしょ……!バイトの子だって、私が彼氏居ないって知ってるし、仕事もあるんだから!……それに私はもう若くないんだから、こんな所に跡つけてたら……恥ずかしいだけじゃん」

「……バレたら、日下部君に付けられたって言えよ」

「やだっ、……ヤダってば!」
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