誘惑の延長線上、君を囲う。
「日下部君ってね、とにかく先生からも友達からも女の子からもモテモテだったんだ。誰からも好かれるタイプ。私もどちらかと言えば男勝りの方だったから、日下部君とは気があってたね」

「そうなんですか!今の日下部さんは鬼ですけどね!どこで擦れてしまったのでしょうか?」

「……さぁ?久しぶりに再会したら、こうなってたわね。長い年月がそうさせた、としか言えないね」高橋さんは日下部さんを見てはクスクスと笑っている。日下部さんは何も言わぬまま、ムスッと面白くない顔をしている。そんな日下部君を何気なく眺めていたら、目が合ってしまった。私の事をギロッと睨んだ後、プライベート用のスマホを弄り出したと思ったら私のプライベート用のスマホのアプリにメッセージが届いたという通知の音が鳴った。

確認すると日下部君からで『帰ったら覚えてろよ。仕返しは十二分にしてやる』と届いていて、返事をする間もなく、すぐに『明日は休みだから出かけるぞ。どうせ暇だろ?』と届いた。お誘いは嬉しいんだけれど、一言余計なんだよね。

自分のデスクに戻り、高橋さんや他の社員の視線を掻い潜り、知られないように日下部君とのやり取りを続けた。
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