嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
うん。美味しい。


「そう言えば、この十日の間、つきはどこにいたの?」

「十日?」

あんなに湖の中で、長い時間を過ごしたのに、元の世界では十日しか経っていないの?

「ずっと、湖のほとりにいたの?」

「ううん。」

お母様に言って、信じて貰えるかな。

「あのね、湖の中には、水神様の世界があって。そこにいた。」

「水神様の世界?」

お父様とお母様は、顔を見合わせた。

「そこで、ほのさんって言う女の人と、友達になったの。」

「ほの⁉」

お父様は、びっくりして盃を落としそうになった。

「もしかしたら、つきの言っている事は、本当かもしれないぞ。」

興奮したお父様は、一冊の本を差し出した。

「この村の生贄の記録だ。100年前に、ほのという女性が、生贄になったと記されている。」

「100年前に、ほのさんが……」

「でも、おまえと同じで、好いた男がいて、可哀相な事をしたとも記されている。」

ほのさん。その後に、るか様を好きになって、結ばれたんだよね。


私は、外のつきを見上げた。
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