嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「ねえ、お母様。生贄になった女は、水神様の妻になるって話、聞いた事ある?」

「え、ええ……」

「私、水神様の妻になったの。私の心に想う人は、その水神様なの。」

「まあ。」

お母様は、口をあんぐり開けている。

「信じてくれないよね。」

「にわかには、信じられないわね。水神様が相手では。」

「でも、そうなの。」


ここに戻って来て、確かに分かった。

私は、るか様が好きなんだって。

はやてには悪いけれど、私ははやてと結婚できない。


「はやてとは、結婚できない。」

お母様は、背中を摩ってくれた。

「したくないのなら、しなくていいのよ。はやてには、私達から言っておくから。」

お母様は、いつだって、私の味方だ。

「我が侭だよね、私。」

「何言っているの。心が動く事は、よくある事よ。」

私はお母様と一緒に、月を見上げた。

綺麗な、まん丸いお月様だった。
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