嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
私はそっと、ほのさんの部屋の襖を閉めた。

何よ。一度だけでいいかなんて、聞いておいて。

結局、楽しんでいるのは、るか様の方じゃない。

胸がズキッとした。

「痛い……」

胸を押さえると、キリキリと胸が痛んだ。

「どうして……」

この痛みには、覚えがある。

確か、はやてが他の女と仲良くしている時に、同じ痛みを味わった。


嫌だ。他の女と親しくしないで。

私だけを見て。私とだけ話して。

他の女を見ないで。


私は、ハッとした。

忘れていた気持ちを、思い出したのだ。

「私……るか様の事が、好き?」

そして、目から涙が零れた。

嘘だ。

るか様を好きだなんて、嘘だ。

私は、すっかり喉が渇いていたのも忘れて、自分の部屋に走って戻った。

「はぁはぁ……」
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