囚われて、逃げられない
そんなある日、その嫌がらせをしていた社員の話してる声が聞こえてきた。

「山道さんって、課長の高校ん時の同級生らしいぜ!」
「マジで!?」
「本人に聞いたから、間違いない!」
「だからか……よく一緒にいるもんなぁ」
「お前、ちょっと狙ってたんだろ?」

は?狙ってた?

「だってよ、地味だけどあれは磨けば光るぞ!それに俺色に染められる」

泰氏にとって苦痛なのは、野々花に嫌われること、野々花に触れられないこと、会えないこと、離れること。
自分から野々花を取ろうとしている。
許せるわけがない。

そこで初めて、感情が動き出した。

「さぁ、どうやって消そうかなぁ……」

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その日の夜。
泰氏は、祖父・泰雄の屋敷にいた。
「泰氏、どうした?」
「俺から大切な人を奪おうとしてる男がいるんだ。
じぃちゃん、助けて!」
「そうか…どうしてほしい?」

「そうだな。消、し、て?」

「いいよ。育実、頼む」
「はい、仰せのままに…」
泰雄の忠実なシモベの育実。

そう…泰雄の言葉一つで、この世界はどうにでもなるのだ。
そして泰雄にとって泰氏は、たった一人の身内で愛しい孫。
なので結果的に、泰氏の言葉一つで泰氏の思うように動くのだ。

その日の内にその社員は、消された。
それからも、泰氏の邪魔な人間は次々消えていく。

そんなある日、野々花が風邪で休んだ日のこと。

「課長、今日一緒に食事に行きませんか?」
ある女性社員が話しかけてきた。
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