囚われて、逃げられない
そしてある日の休日。
朝起きると、いつものように泰氏が野々花の頭を撫でていた。

「野々、おはよ!」
「おはよう…いつも、何時に起きてるの?
よく考えたら、泰氏くんの寝てるとこあんまり見たことがない」
「何時ってのはないけど、熟睡はあんましないから、野々がちょっと動くだけですぐに目が覚めるんだ」
「そうなの?疲れない?」
「ううん。野々がいるから、癒されてるよ!」

起きて、一緒に朝食を作る。
「今日、どっか行く?」
「うん。でも、午前中はゆっくりしたいなぁ」
「わかった!」

朝食を済ませ、ソファで野々花が泰氏の肩に頭を預けまったりしていると、泰氏がスッと立ち上がった。
「野々、ちょっとごめんね…!」
「え?泰氏くん、どこ行くの?」
「ん?トイレ」
「あ、じゃあ…早く戻ってきてね!」

そしてまた立ち上がると、
「どこ行くの?」
「飲み物取ってくる。喉乾いたでしょ?紅茶入れて来るね!」
「いらないから、ここにいて?」
と、野々花が狼狽したように訴えてきた。

そして…
「泰氏くん、今度はどこ?」
「煙草、部屋に取りに行きたいな」
「………」
「ダメ?」
「私も、ついていく」
「フフ…うん、行こ?」

泰氏はこの状況に、心の底からの狂喜と驚愕に包まれていた。
これ程までに、野々花が嵌まるとは思っていなかったのだ。
こんなに自分の想像以上に、野々花が嵌まるとは……
泰氏の方が、圧倒されていた。

「ほんとに、私と泰氏くんしかいない世界がほしいね……
…………なんてね(笑)」
「だったら、ここに閉じ籠もる?」
「え?」

「二人の世界だよ。この中は」

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