囚われて、逃げられない
間違っているのは、誰だろう。

泰氏?
野々花?

けっして、泰氏は野々花を騙したわけではない。

泰氏の言っていた言葉。

【俺は、野々のこと束縛する。
嫉妬深いし、このままここに一緒に住んでもらう。
もう片時も…俺からは放れられないし、逃げられない。
野々がこの家に入ったら、もう…本当に逃げ道がなくなる】

【俺の愛は“普通”じゃないから。
普通の精神じゃ、俺とは付き合えないからね】

と、最初から泰氏は、野々花に伝えていたのだから。



泰氏と恋人になると決めたのは、野々花自身。

恋愛に正解はない。
ただ泰氏の精神が異常で、変わっているだけ。

でももしかしたら、異常なのは泰氏ではなく、周りの人間なのかもしれない。


「泰氏く……大…好きだよ…」
「うん!
俺は、野々を愛してるよ…
ほらっ……もう…何も考えないで?
ただ、俺の愛に溺れて落ちていけばいいんだよ?
“泰氏”って言葉だけしかわからなくなって、ただ…俺の名前だけ呼んでいればいいんだよ」



今日も、野々花は泰氏に抱かれ、囚われ、逃げられない。

ただひたすら“泰氏”の名だけ呼び、生きていく。





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