囚われて、逃げられない
「泰…氏く…これは、何……?」

「俺が野々を好きなってから今日までの“山道 野々花コレクション”」
「あの服や、バック、この筆箱も捨てたはず……
あの写真って、大学生の時だよ?
制服、なんで持ってるの?
これ、バイトで支給されたエプロンだよ?なんで泰氏くんが?
え?え?どうゆうこと…?」
野々花は軽いパニックになっている。

「ずーーーっと、見てたよ!
野々はおかしいと思ったことない?
野々から片時も放れられないこの“俺が”高校卒業してから再会するまで、野々花がいない生活ができてたと思う?」
「え?」
「無理に決まってんじゃん!」

そうなのだ。
異常な感覚の泰氏。
泰氏にとっての苦痛は、野々花に嫌われること、野々花に触れられないこと、会えないこと、離れることだ。
そんな泰氏が高校卒業してから再会する九年間も、野々花と離れて生きていけるわけがない。
だからせめて、野々花を遠くから観察していたのだ。

「野々に会えなかった九年間、この部屋が俺の唯一の安定する場所だったんだぁ!」
「だったら、こんなことしないで高校卒業してからお付き合いしたらよかったんじゃ……」
「だから!家庭の事情で、引っ越さなきゃいけなかったって言ったでしょ?
ちなみにこの写真や野々の私物を常にとったりしてたのは、俺じゃなくて育美だよ。俺の代わりに野々のストーカーしてもらってたの」
「じゃあ、育美さんが常に私の近くにいたの?」
「そうだよ!育美のお陰でなんとか九年間生きてこれたんだよ!」


「泰氏くん、もうこれ…捨てて?」
「はぁぁ?なんで?」
< 43 / 44 >

この作品をシェア

pagetop