小さな恋 大きな愛
夏の余韻
秋風が生温く美里(みり)はまだ夏の余韻にひたっていた。
今年の夏は海もプールも行ってない。その真っ白な身体はまぶしく太陽に光っていた。
「日焼け止めのせい?」
最近の日焼け止めはパールやラメが入っているのがあって肌に塗ると輝く。
「秋っぽくないね…まだ陽射し強いし」
ドラッグストアでサンプルを塗りまくり少し得した気分。
やっと来たバスに乗り込む。今日は街まで出て買い物した帰りだ。
いつも御用達のドラッグストアの前にバス停がある。
いつもは週一回の病院へ行くのに使うバスだ。
ドアが閉まり早速買い物したモノを見てみる。美里の癖だ。
「本日の収穫はっと…頭痛薬にかかとクリームに五本足スリッパ」
美里は頭痛持ちでしょっちゅう薬を飲んでいる。
「ツルツルになる五本足スリッパ早く履きたいなぁ…うーんぃぃ感じ」
そんなこんな少し夢中になっていたら停留所も近づいてきた。
「誰かボタン押さないかな…」いつも毎回思う。ギリギリまで待ってみる。
(ブー!)
「やた!誰か押してくれたなんか知らないけどいつも押すのにちょっとの勇気がいるんだよね」
(プシュー)ドアが空いた。フラつきながら降りた。
美里の他にも下車する人は何人かいた。なかなかバスが発車しない。なんで?
覗いてみると何だか料金箱の前でもぞもぞしている人がいる。
「すみません!大きいのしかないんです!」
若い男の子だった。
運転手さんは冷たく「お釣りないよ!」ってひどいじゃない。
困ってたので美里はチャリ〜ンと料金箱の中へお金を入れた。
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