Your PrincessⅡ
「身分が高いものというのは、秘密ごとや謎が付きものなのだよ」
 昔、お兄様が笑って言っていた。
 私には、さっぱり理解出来ない言葉だったけど。
 結婚してみて、ようやくその言葉の意味がわかった。

 どんなに疑問に思っても。
 どんなに首を傾げて質問しても。
 その考えは「駄目!」と言って払いのけられてしまう。

 ただ。
 教えられた情報を頼りに考えると。
 夫である蘭は、跡取り騒動で命を狙われていて。
 蘭のお兄さんであるローズが跡取り決定になったにも関わらず。
 蘭という存在自体が邪魔だと言われ、死ぬまで命を狙われる運命だという。

 決着をつけるために、私は一年間、安全な所で避難しろっていう意味なんだと思うけど。
 どうして、ライト先生と兄妹(きょうだい)という設定で児童養護施設で働くのかが意味わかんない。
 ただでさえ、人見知りだし。
 この外見からしたら、子供たちにはホラーでしかない。
 施設で暮らし始めた頃は、誰も話しかけてくれなかった。
 せっかくライト先生が考えてくれたクララという名前ではなく、
 子供たちは延々と「バケモノ」と呼んでくる。
 自分が醜い人間だってことは、頭でわかってはいるけど。
 傷つくのだ。
 毎日、バケモノと呼ばれ。
 洗濯物を干していれば「バケモノ、消えろ」と石を投げられる。
 泣いてばかり。
 こんなところ、早くいなくなりたいって毎日思った。

 毎朝、早く起床して。
 朝食の準備に後片付け。皿洗い。
 それが終われば洗濯物を洗って、干して。
 施設の掃除をして・・・。

 ライト先生と言えば、この施設に住みながら。
 医者として子供たちの健康管理を任され、
 時に、近くの村まで往診に出かける。
 そんな生活サイクル。
「いつまで、ここに居なきゃいけないんですか?」
 と先生に質問すると。
「迎えに来るまで」
 と言われた。

 普段、会話することのないライト先生だけれど。
 週に1~2度。
 山登りに付き合わされた。
「君は体力がなさすぎる。このままじゃ、ここで生活は出来ない」
 ただ、ひたすら黙々と。
 急斜面を登らされるのも、また苦痛だった。

 精神的苦痛を与えられ、肉体的苦痛を与えられ。
 何なの、この毎日と思って。
 でも、考える暇もないくらい疲労困憊して。
 気づけば、一年が経っていた。
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