愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様

 なんで。

 何でお前がそんなに怒るんだ。
 なんでそんなに俺なんかのために必死になってくれるんだ。
 俺達はただの同級生で、親友でも幼馴染でもないのに。それなのに、なんでそんなに怒ってくれるんだ。なんで我慢ならないって言ってくれるんだ。

 何でそんなに必死で、俺が死ぬのを止めようとすんだよ。

 意味わかんねぇよ。
 ……まさか、スパイだからか? 

 俺の弱みをつかんだら、何か欲しいものを買ってやるとか父さんに言われているのか?

 それで俺に声をかけたのか?

 知り合いが死ぬ辛さを知ってるからとか、自由になれだとかいったのは全部味方だと思わせるための詭弁で、嘘なのか?
 だってそう考えないと説明がつかない。
 高校生がぬいぐるみにカメラをつける理由も、俺の自殺を止める理由も、父親のスパイだということなら、全部納得がいく。

 でも本当にスパイなら、なんでわざわざあるのをバラした?
 そんなことしてもマイナスにしかならないのに、それなのになんで?

 スパイじゃないからか? 

 昨日言ったことは全部事実で、本気で俺を死なせまいと思ってるからなのか? そのためだけにカメラをつけたのか? それはいくらなんでも度が過ぎてないか?
 行動に不可解なところが多すぎて、俺は混乱した。

「このまま終わっていいのかよ‼ あんなくそみたいな父親に何かも奪われたままで! 今死んだら、絶対後悔するぞ!!」
 震えてる俺の胸ぐらを掴んで、阿古羅は叫んだ。

「じゃあどうしろって言うんだよっ!? 毎日毎日どんなに泣いても謝っても殴られて、反抗したら余計酷い目に遭って。大好きな母さんにも、手当しかしてもらえなくて! こんな日常、もううんざりなんだよ!」
 震えている身体を無理に動かして、阿古羅の腕を振りほどく。

 もしもスパイだったら、コイツの言う通りにしない方がいいと思ったし、本当に生きてることにうんざりしてたから、そうした。
「じゃあ、一緒に暮らそう」
 阿古羅はやせ細った俺の背中を撫でて、とても優しい声色で囁いた。

「……は?」
 身体の震えが止まって、口から弱々しい声が漏れる。

「一緒に暮らして、くそみたいな生活からおさらばしようぜ。前も言ったけど、俺一人暮らしだから、本当に俺の親に虐待のこと話さなくていいから、二人で暮らそう」
 阿古羅は目がとれてない綺麗なぬいぐるみで、俺の頭をぽんぽんした。
< 52 / 158 >

この作品をシェア

pagetop