わたしが最愛の薔薇になるまで
 私はすがるように、葉室の胸に寄りかかった。

「葉室様、どうか、私と結婚してくださいませ。あの子たちが道を踏み外してしまう前に」

 涙ながらに言うと、葉室は青ざめて私の肩をつかんだ。

「蕾くんと咲くんに、何かされたのですか?」
「いいえ! あの子たちは何も悪くありません。悪いのは私です。亡くなった夫は、私を垣之内に閉じ込めました。私は、決してあの人のようにはならないと、心に決めて生きてきた。それなのに、あの子達は自ら垣之内に閉じこもろうとしています。私がいるせいで……」
「あなたも、何も悪くありませんよ」

 葉室は、意を決した表情で私を立たせると、愛おしげに頬を撫でた。

「子どもは親を愛します。とくに母には執心するものです。最愛の人が、見知らぬ男と再婚しようとしていたら、嫉妬もしますよ」
「そういうものなのでしょうか……?」
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